まとめ -エモーション-

 

本日のテーマは、まとめ -エモーション– で最終回です。

全5回にわたり、エモーションについてみなさんと深化させてきました。ここではダイジェスト版として全体の振り返りと私が考えるエモーションを語る上で、大切なことをかいつまんでまとめていきます。

初めてこの記事を読んだという人は、下記に過去記事のリンクがあるので、ぜひ参考にしてください。

それでは早速、全5回で私たちがエモーションの何について学んできたかを振り返ってみましょう。

 

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<第1回:今私たちが学ぶべきは論理的思考ではなく、自分・相手の感情がどのように動いているのかを知るべきです>

人は感情の生き物です。感情は認知に影響を与え、人・組織の行動に影響を与えます。

ビジネスにおいて重要なことは、論理的思考であると考えられ、効率化における生産性の向上が優先順位一番と考えられてきました。

確かにマス生産の時代はこれが正解で、多くのビジネスマンは感情を廃し、いかにシステマティック、つまり機械的に考え・動くことができるかが求められてきました。

 

しかし今時代の変化の途中により、効率化などが求められる一方で、私たちは人間が本来持つクリエイティビティが必要になってきているのです。つまり私たちはより人間らしい思考が求められてきます。そしてそれを実現させるには、私たち自分たちのことをより深く知っていかなくてはいけません。ここでは3つの種類に分かれた感情をおさらいしましょう。

<感情の種類>

■分離感情(個人)
「怒り」「喜び」「憎しみ」「恐れ」「嫉妬」「驚き」「悲しみ」「幸福」「ねたみ」「いらつき」などは、私たちが一般的に感情と呼ぶものに分類されます。この感情は外部刺激で引き起こされ、短い期間で収まりやすい傾向にあります。これを説明しているのが感情イベント理論です。

感情イベント理論では、感情は外部刺激から始まると考えられています。一般的にポジティブな刺激はポジティブな感情を、ネガティブな刺激はネガティブな感情を誘発します。またネガティブな刺激はポジティブな刺激と比べ、5倍人の感情に影響を与えることがわかっています。

 

■帰属感情(個人)

・ポジティブ感情:様々なことを肯定的に受け止めがちな個性

・ネガティブ感情:様々なことを否定的に受け止めがちな個性

ということができます。これを認知評価理論に当てはめてみましょう。認知評価理論では、同じ外部刺激でも人によって認知の評価が異なることがわかっています。同じ体験をしているにも関わらず、人によっては考え方が違うのは帰属感情が一人一人違うからなのです。

また人は分離感情を何度も経験すると帰属感情に反映されていきます。

これを整理してみると、下記のような循環プロセスとして考えられます。

認知評価⇒感情体験⇒帰属感情⇒認知評価 (循環プロセス)

 

■ムード(組織)
組織・職場は人の集合体であり、つまり個々の感情の集合体(=ムード)であると考えることができます。そして比較的安定して職場に定着します。これは良い意味でも悪い意味でも相互に影響し合うという意味です。

この三者が互いに深く影響しあうことをアフェクトと呼びます。このムードは感情の伝播とも考えることができます。感情伝播とは、周囲からポジティブ(ネガティブ)な感情表現を刺激された場合、人はポジティブ(ネガティブ)な感情を抱くといった意味です。

このムードは物理的な言語表現(表情・声のトーン・身振り手振り・体の接触・対話者との物理的な距離)に影響を与えます。つまり感情は近くにしか伝播しない傾向にあります。したがって感情のマネジメントは企業トップだけではなく、現場リーダーにこそ重要な仕事として考えられます。

 

第2回:感情インテリジェンス -感情をうまく制御するには-

ちょっとしたことですぐカッとなったりするなど感情の起伏が激しく自分に辟易したことはありませんか?

「なんでもっとうまく自分を表現できないんだろう?」「あの人みたいに相手に寄り添えるようになりたい」と思っている人に向けたトピックです。

■感情制御

<感情インテリジェンス(EQ:Emotional Intelligence Quotient)>
EQとは、感情をうまく取り扱える個人の総合能力のことで、EQが高いと相手の気持ちをうまく汲み取り、正しい方向に導くことができると考えられています。そしてEQに必要なのは下記4つの要素であることがわかっています。

  1. Perceiving(気づき):自身や他者の感情にきちんと注意を払えているか
  2. Using(使用):特定の感情が認知にどのような影響を与えるかを把握できているか
  3. Understanding(理解):感情が時間とともに変化するなどの仕組みを理解できているか
  4. Managing(操作):感情をうまく制御できるか

これは基本的にEQは知識があるだけではいけません。もちろん前提としての知識は必要ですが、それ以上にそれをうまくアウトプットできているかの方が重要です。

またそのアウトプットは独りよがりなものになってしまってもいけません。客観的な目線で自分と相手の距離を測りながら、相手のことを理解することが求められるのです。

 

<感情のディスプレー>

  • サーフェス・アクティング(外にディスプレーする感情)
    →「外にディスプレーする感情」と「自分の本心」にギャップがあるまま感情表現すること
  • ディープ・アクティング
    →自分の内面・感情そのものを自分が表現したい感情に変化させ、感情表現すること

 

どちらが精神的に良いのでしょうか?それはディープ・アクティングの方がサーフェス・アクティングより優れていると考えられています。なぜなら周囲へ効果が波及しやすいからです。取り繕った表情ではなく、感情変化した表現に嘘は無く共感されやすいからとされています。

また心理的負担が軽いこともわかっています。サーフェス・アクティングのように本心とは知合うことを表面上で表現することはストレスが高くなるのです。つまり何か相手に対して感情を表す時は相手の立場に立つ、つまり「自分ごと」として考えた方が効果的です。これはホスピタリティーの話をしているのではなく、自分の精神的な部分においても良いことがわかっています。

 

<第3回:私たちの日常は偏見で満ち溢れている>

この回が今回のエモーションの深化の中でもっとも反響をいただきました。前振りで、自分たちの行動と考えのギャップに驚き、中には失望する人もいるかも知れないと書いて置いたのですが、皆さんからの反応はやはり、「こんなにも自分の行動と考えにギャップがあるとは知らなかった」や「具体的に自分はこんなバイアスを持っているのだと知ることができた良い機会でした」などの声をいただいています。

まだご覧になっていない方は是非こちらからみてみてください。テストといっても5分ほどの簡単な質問に答えていくだけです。

 

第4回:前回の認知バイアステストでドキッとした人は必見です

第3回でフォーカスした「バイアス」とはなんなのか?をここでは振り返っていきます。人は自分では公平な目で物事をみているつもりでも、知らずのうちに先入観で物事を考えてしまっています。バイアスは悪い事ばかりではありませんが、私たちの意識がバイアスで凝り固まってしまっていると、一部の観点でしか物事が考えられなくなり、非常に危険です。

<バイアス>

人は意思決定を下し、行動するために、周囲の情報を収集し・記憶し、その情報を元に意思決定をくだし、行動します。しかし人は認知に限界があるので無意識のうちに自分が優先して収拾すべき情報を認知のフィルターで取捨選択しているのです。もう少し詳しくみていきましょう。

 

■認知バイアス(個人)

  • ハロー効果:halo=後光が差すという意味で、ある人やモノがもつ顕著な特徴だけに基づいて、全体を評価すること(テレビCMに高感度の高い有名人を起用することが良例)

 

  • 利用可能バイアス:人が記憶にとどめていた情報を引き出す時に、「簡単に想起しやすい情報を優先的に引き出し、それに頼ってしまうバイアス」

・想起容易性:記憶のインパクトが大きい情報

・検索容易性:記憶の中から即座に検索しやすい情報(Ex いつものを買っておけばよいなど)

・具体性:身近な人からの情報は、普遍的な情報でもないのに優先的に引き出される

 

  • 対応バイアス:根本的な帰属のあやまり

→他者が何か出来事や事件に巻き込まれたときに、その本当の理由は「状況」にあるのに、理由を他者の人柄・資質などに帰属させてしまうバイアス

 

■認知バイアス(組織)

  • 社会アイデンティティ理論:自分が社会グループのどこに属すと認識するかについての認知バイアス

 

  • 社会分類理論:他者をグループ分けする認知バイアス

→仮に100人、人がいた場合、ある特定の情報を元にグループ分けを行う。またそのグループ内に自分が入るグループにポジティブな印象を抱くバイアスもある(イングループ・バイアス)

 

以上エモーションのまとめ回になります。いかがでしたか?エモーション(感情)となるとあまりに自分たちと身近なトピックすぎて今まであまり関心を持った人も少なかったのではないでしょうか?しかし自分たちに身近だからこそ、そして今サイド私たち人間という存在に光があたっているときだからこそ、このエモーションを見つめ直す良い機会なのではないでしょうか?

ちなみに私が感情について興味を持ったのはある1冊の本との出会いでした。今まで合理的に考えるのが正義と思っていた私に、「人間とは何か?」「なぜ私たちは合理的に全てを判断できないのか?」を考えさせてくれた本です。

その本とは『これからの「正義」の話をしよう』(著:マイケル・サンデル)です。少し前の本ですが、今読み返し考えても価値のある本だと思います。読んだことない人は是非この機会に読んでみてください。下記Amazonリンクからご購入いただけます。

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